ある朝/
 
寒すぎるサーバー室で眠った彼は
真冬に新月で小指を切る夢を見た
次の朝になって彼が目覚めると
世界の半分が失われていた

空腹の彼はコードで繋がったまま
駅前まで歩いて喫茶店に入った
注文した熱いコーヒーが運ばれると
彼は陶器の砂糖入れに入っている
小さなアンモナイトの化石たちを
一つ、二つとカップの中に入れた

世界が再生するまでの時間は
夜明け前の永遠の次に長いから
彼は寝ぼけ顔のウエイトレスに
避雷針を注文して粘ることにした
窓の外ではポツリポツリと
戦争が降りはじめていた

彼はコーヒーをすすりながら
半分の世界と共に失われた人々が
再生を果たした時に必要となる
新しい名前を考え続けていた
それはとても楽しい作業だった
小指の微かな痛みを忘れるほどに
彼はコーヒーのお代りを頼むために
ウエイトレスに向かって中指を立てた

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