国道/Seia
 
国道

どこかで一本
曲がる場所を間違えたのか
デジャヴを含んだ知らない路地に
迷い込んだ先を抜けて
開けた国道はついさっき
生まれたばかりのようだった

横断歩道はまだか細く
蒸れたアスファルトの上を
ふよふよ揺れて落ち着きが無い

この子たちは
踏まれて 踏まれて
大きくなるんです

旗振り五年目だというおじさんが
渡る前にそう話してくれた

私に踏まれた白線は
びちびち激しくうねったあと
そのままピクリともしなくなった

まるで正解がわからぬまま
そろそろようやく渡りきって
恐る恐る後ろを振り返ってみると

私の足から逃れた一本を
片足で踏みにじりながら
柔和な微笑みを浮かべる
おじさんがみえた

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