ノーマルヒル/
村田 活彦
斜面の彼方
架空の消失点に向かって
きみは加速する
ゴーグルに叩きつけては
後方へ飛び去る風が
喝采にも罵声にもきこえる
そのクレシェンドの頂点で
はるかに強く
心音をたたきつけ
きみは一本の矢になる
地上では
カメラクルーが色めきだつ
キャスターが叫ぶ
コーチはこぶしを握る
だがその瞬間
雲の果てにひらめいた空の色は
確かに
きみだけのものだ
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