筋肉賛歌/片野晃司
 

ぎゅんぎゅんと花々の茎と茎との間を抜けて、背丈よりも低い峠をいくつも越えて、あのランナーはわたし。ふくらはぎ縮み、ふともも縮み、南風燃え上がり、握りこぶしほどの小さな山をいくつも踏んで、森の奥のか細いせせらぎをせき止めればあふれ出す、崖から飛び出して向かい風なら旋回する。筋肉から、骨格から、関節から、神経から、わたしをつくる言葉のすべてがこの地勢に逐一符合して、あの海沿いの道のカーブ、あのトンネル、あの崖の褶曲、朝は昼、夜は星々、球体のみどり、球体のあお、脳はどこまでも膨張し拡散し、いくつか戦いがあって、うっすらとばらばらなあわあわになって、そこから一気に筋肉はぎゅんぎゅん収縮、はじけ、ひきつ
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