三ッ石にて/そらの珊瑚
 
 太平洋の荒い波が
 かつてひとつであった石さえも
 みっつに分断させたのよ
小説家志望の女の子の戯言が
ここでなら
信憑性をもって
語りかけてくる
干潮時にだけ現れる
海の通路を渡りながら

海に溶けた塩は
なめればしょっぱいし
うっかり目に入ろうものなら
思わず悪態をつきたくなるほどの痛さだ
だけど真水では沈んでしまう塊が
塩水であるがゆえに
浮かび上がって踊ることがある

潮だまりに取り残された
奇妙な形の生き物は
(彼らからみたら人間のほうが奇妙な形であると思うが
 必然の形というものはいつだって美しく奇妙だ)
神から与えられた日曜日を
のんび
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