残された傷の意味/ハァモニィベル
 

古い曲が流れている。
詩人がそれを聞いていた。


何の疑問もなくカラオケを唄える人は羨ましい
そう思いながら、

友人に連れられて入った、古びたカラオケ♪スナックで、
水割りを片手に、詩人は、客の一人が唄うテレサ・テンを聞いた。
『つぐない』だった。
♪ 〜愛をつぐなえば、別離になるから〜

    <壁の傷も残したまま置いてゆくわ>

詩人の耳がそこで止まる。「壁の傷」?・・・
それは 何の傷だろう?

何によってついた傷だと思う、と友人に尋く
痴話げんかの時についたキズだろう、物を投げつけた時についたとかの
そうかな、・・・
詩人は納得できなかった
[次のページ]
戻る   Point(1)