龍のいない青空/石川敬大
――夕映えがきれいだった あのころ
もし自転車にのれていたなら
ほかの街で ほかの暮らしをしていたのかもしれない
すでに滅びた高句麗の
釘のように錆びた川がながれる
ふるい案内板がこの街にある
古名《コマ》
ハングル読み《コグリョ》という架空の
博多湾はその朝 霧がふかくて
貨物船が接岸する人工湾岸の岸壁で潮風にふかれボーゼンとつっ立っていた
杭のように誘導灯のように
――英雄ヘモスの子、建国王チュモンから韓流の物語をひらいた
かれの海は
くだける波頭であり
もろく崩れおちる橋であるけれど
高句麗とこの街を隔て
高句
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