2つの一瞬/ハァモニィベル
 

久しぶりに水族館へ行きましょうよ。
そう彼女から電話があった。
十年以上も会ってなかったのに。

新宿の土曜日は待ち合わせには不向きだけど。
そう言っていたとおりの人混みの中、
約束の時間が少し過ぎ時計は午後になった

必ず行くわ。
― 遅れている彼女がまだ現れないのか
― どれが彼女だかわからずにいるのか
原因がしぼられていく暇を与えぬまま
多すぎる人並みは、まるで
水族館の魚のようにめまぐるしく流れていく

おひさしぶりね。
後ろからふいに肩をたたかれ、
振り返ると、まるで当然のように
明るく笑う彼女が立っていた

まだ時間あるわね。
懐かしい喫茶
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