美しい薔薇も見ないで/ハァモニィベル
背中に一本の薔薇を生やした猫が
窓辺に座って、ずっと外を見ていた
一度だけ晴れてみたいという
空の悩みを聞いているのか
目の前の邸宅の主人のハゲ頭の上に
苔むした狡猾を笑っているのか
隣から聞こえる奥さんの叫び声
「戦争は嫌よ!散らかるじゃないの!」
そんな好戦的な怒鳴り声を聞いているのか
いったいお前は何を見ているというのだ
背中から伸びた緑の茎には葉が開き、
その先端に美しい赤い薔薇を咲かせたお前よ
いったいお前は何を見ているというのか
理性が風呂でポテトチップを食べていても
顔を知らない同級生がインターホンを押していても
お前は背中に薔薇を一本突
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