牙のある天使 〔物語詩〕/ハァモニィベル
 
牙のある天使が夕焼けも見ないで
独り 膝を抱えて座っていた。

全身に受けた燃えるようなオレンヂのひかりも  
全身を包むように前に広げた大きな羽根も
寂しさを覆いきれない そんな夕焼けの場所に
その天使は どう見ても天使のままで 
独り 自分を抱えたまま座っていた

「わたしに近づいてはダメ!・・ 」
そう天使は言ったきり
僕を無視するように 潤んだ瞳を夕方の空へ向けて 独り



翌日、天使へのプレゼントを携えた僕は、もう一度あの夕焼けの場所に行ってみた
僕の一番大事な宝物を 手に取った天使の 逆立った髪の毛
悲痛な慟哭が一瞬にして沸き起り 天地を割る様な
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