ひかりのまち/村田 活彦
まだ眠ってる街を起こさないように
始発がでるまで少し歩こう
回送表示のタクシーが一台
スローモーションのように通り過ぎる
ながい夢を見ていた気がする
きみの唇はひび割れてしまった
かすかな歌が聞えた気がして
なにげなくふりかえったとき
朝日がきみの髪をふちどる
橋をわたるときに足をとめて
鏡のような水面をながめている
すべてが流れていくのならば
まばたきさえも愛おしい
かすかに色づきはじめた空気を
そっと胸に吸い込んでみよう
どこかから
パンを焼く匂いがして
ぼくたちは手をつないで走りだす
朝日がきみの髪をやわらかくふちどっていく
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