靭やかに眠れ/ハァモニィベル
靭やかに眠れ
今夜お前はそっとひとりで月を眺めているだろう
暗すぎる闇が、光をくっきり冷酷に尖らせて お前は
恥に似た怒りを 虚しさのあかりに照らし出されてやしないか
どこかの家のオルガンの一音一音が銃弾のメロディーを奏でて
胸を蜂の巣に叩きのめしてやしないか
今夜俺のこの両手が
お前のその眼とそして耳をしっかり塞いでやれなくてすまない
お前を強く抱きしめたまま俺の背中が盾になってやれなくてすまない
お前が、今見上げたその空は
いつもこの俺がじっとひとりで見つめてる空だ
こんな夜にかぎって
まだ見ぬ透き通ったお前が頭に指をあてがって、何ひとつ答えをくれぬ部屋の中に
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