運河の夜/藤原絵理子
ね」
H:「寒いのかい?」
S:「ううん.ちょうど良くて気持ちいい」
H:「ほてった頬を撫でていく海風.ここで,船の汽笛なんか鳴ったりすると,まさに,そのもの」
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S:「裕次郎さんのこと?さっきの店,ごひいきなのかしら,ずーっと彼の歌ばっかり流してたわね」
H:「知ってる曲あったかい?」
S:「2曲くらいあったかな」
H:「きみの横顔はステキだ…」
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S:「…?」
H:「そんな歌詞があっただろ,さっきやってた歌の中に」
S:「そうだっけ?」
H:「ああ,もう,このお姫様ときたら,わざといろんなツボをはずすのがうまいんだから,僕はただのタクシードライバーになってしま
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