運河の夜/藤原絵理子
残念.きみの深層心理的分析をして…」
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S:「夜の闇はキレイなものだけ見せてくれるから好き.けど,漆黒の闇は嫌い.小さいともしびが,いとおしさをかき立ててくれる」
H:「きみはときおり,現実にいるのか,いないのか,その境目がはっきりしなくなる」
S:「あ,深層心理のことよ.分析してみて」
H:「原生林で迷っている.周りに大きなフキとクマザサと木しか見えないところで,きみは迷っている」
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H:「賢明なきみは,太陽の動きをちゃんと把握していて,方角は確実にわかっているけど,頭の中の地図が薄らいで消えかかっているんだ」
S:「あたしは,遭難するの?目的地への距離を間違って…」
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