運河の夜/藤原絵理子
 
しまう」
23
S:「もう,何言ってんの? 酔っぱらってる?」
H:「ところで,今,通り過ぎていったクルマの助手席,見なかったかい?」
S:「あたし,目が悪いから,暗くなると余計に見えなくなって…」
H:「ヒツジが乗ってたんだよ,右耳にピンクのリボンを付けて,やかましい牧羊犬から逃れてせいせいした,みたいな顔をして」
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S:「で,ドライバーは,顔の左半分がやさしい目をしたソリ犬で,右半分が凶暴な目をしたオオカミ,って具合かしら?」
H:「クルマが町から遠ざかるにつれて,だんだん左側も本性が.どっちにしても,腹を空かしたオオカミは見境なく…」
S:「あ,ラーメン,食べない? 食
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