運河の夜/藤原絵理子
 

H:「やがて,樹々の間にオレンジ色のか細い光を投げかけながら陽は沈む.おまけに,曇ってきた上空から,ぽつり,ぽつりと雨が」
S:「なんだか,ひどい話だわね」
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H:「周りはとうとう,漆黒の闇.霧のような雨が降っている.きみは大きなフキの葉っぱを傘代わりにさして,西,西,とつぶやきながら…」
S:「あたし,そんな暗いトコ,歩けないわよ」
H:「大丈夫.まもなくきみは,森の向こうに小さな明かりを見つけるんだ.ほら,ここの店みたいな」
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S:「真っ暗な森の中にそんな明かりを見つけたら,すごくうれしいだろうな…けど,ちょっと怪しい気もする」
H:「そ,怪しい.明かりは,木こりの
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