運河の夜/藤原絵理子
 
いはい.今夜も,不肖,私めが,ボディガード兼案内人兼…あとはなんだろ…」
S:「ねえねえ,あなた,ああいうの引っ張って走れる?重いのかしら,あれ」
H:「やれやれ,このお嬢さんは,どうやら僕に車夫までやって欲しいみたいだ」
S:「違うわよ.ちょっと訊いてみただけ」

H:「僕は高校時代にはバスケをやってたし,大学に入ってからは,こういう倉庫で大豆の荷役のバイトもやったし,俥は引けると思うよ」
S:「…」
H:「…どうしたの?」
S:「あなたって,ふざけてる時とマジな時の境が,よくわかんないわね」

H:「…いつもマジメなつもりなんだけど」
S:「あは,ごめんなさい.茶化す
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