家族の手/
服部 剛
白隠禅師が、墨で描いた
手のひらの絵が
硝子ケースの外に立つ、僕に
語りかけた
(両手を打つと、音は鳴る
片手で音は、どうすれば鳴る?)
姿の無い白隠禅師が問うので
硝子ケースの前に立つ、僕は
自分の手のひらを
同じ具合に開いて、観たら――
親父
母ちゃん
俺
嫁さんと
幼い周の
朧(おぼろ)な小さい顔達が
五本の指先に、浮かび上がり
嬉しそうに、それぞれの
小さい口を開いて
家族の笑い声は密やかに
美術館内に、木魂(こだま)していた
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