壜/
Lucy
手紙を入れて
春の小川へ流してやるのだ
壜はゆらゆら流れて行って
コルクの栓もしだいに腐り
水が浸み
河口近くに沈むだろう
それとも海へ流れ着き
波に揉まれ
誰も聞かない音をたて
岩の間であえなく割れる
橋の上から川面に落とした
壜は流れ
遥かに歳月を超え
浜辺で私は小壜を拾った
僅かな砂が底に溜まっているだけの
見覚えのない空き壜
手紙の文字は
今も
心に刺さったままで
(「蒼原」37号掲載作品、2014年1月27日改稿 )
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