夏の終わり/なるせ
 



気付きもしなかった。



こんなにも空が変わらずに流れていたこと
雲は世界をみまもっていたこと
時が流れても、なにひとつ変わっていなかったこと
永遠を信じられるくらいのうつくしさに

気づけなかった。





鐘の音が聞こえる。
終わりを告げる涙の音色だ。

あなたがいなくなる夢にうなされ
わたしは目を覚まして、ほんの少し泣いた。
窓から見える空のあまりの広さに
声をあげて泣いた。





(おぼえているのは

たしかに「あなた」がそこにいたことと





なつのおわりのにおい)





引き裂
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