ヴェネツィア/藤原絵理子
肘までまくり上げてする.春先はエンドウ豆,夏はキュウリ,晩秋は黒豆…収穫は1年中彼女を追い立てるように巡ってくる.その間も,畑を耕して畝を立てたり,種まきや苗の植え付けをしたり,とにかく体を使ってする仕事が目白押しである.自然に肉体はその強靱さを増していく.
「少し風が出てきましたね.寒くないですか?」
「あたしはいつもうんざりするような現実の季節といっしょに暮らしているから,この季節に風が吹いたら,だいたいこのくらい,っていうのがわかっていますの.今はまだ寒くなるような風じゃないわ.たまに例外もありますけどね」
「例外,というのに興味がありますね,私としては」
「そうね…例えば,あなたがその仮面を取って,素顔を見せてくれるとか,そんなことね」
これから話が展開するかどうかは,筆者の気分しだい♪
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