手のひらの花、そしてあのひとの雪/石瀬琳々
かでもこぼれないようにわたしを支えて
こころは遠く 燠火ばかりが香る
(手のひらをのべると すぐそばに感じる
指と指をむすべば 花は咲き続けるいとしさで)
わたしの 手のひらにも花が咲きはじめる、
どうかここに来て 今すぐ来て
あのひとは抱きしめてはなさないまぼろし
それともやさしく絡みつく指さきで
奪っていこうとする、このちいさな世界さえも
わたしはわたしのなかに咲きほこる花になる
(雪降る時間 あのひとに抱かれてねむる、
くもりガラスの向こう側でわたしは)
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