手のひらの花、そしてあのひとの雪/石瀬琳々
 
かでもこぼれないようにわたしを支えて
こころは遠く 燠火ばかりが香る


 (手のひらをのべると すぐそばに感じる
  指と指をむすべば 花は咲き続けるいとしさで)


わたしの 手のひらにも花が咲きはじめる、
どうかここに来て 今すぐ来て
あのひとは抱きしめてはなさないまぼろし
それともやさしく絡みつく指さきで
奪っていこうとする、このちいさな世界さえも
わたしはわたしのなかに咲きほこる花になる


 (雪降る時間 あのひとに抱かれてねむる、
  くもりガラスの向こう側でわたしは)







戻る   Point(9)