まり と 水銀/イグチユウイチ
 
したが、
押し当てたガーゼを離してみるたび、
何故だかそこが 濃い紫色に染まっていくのでした。


" 水銀は うんと強い毒があるすけ、
 体を腐らす 毒があるすけ、
 どんげんことがあっても 触ってはならんがよ。"


部屋には、置き時計の針だけが響いていました。
壁にかかった学生服とスカートが、
視線を逸らしたような気がしました。
両の眼には 今にもこぼれそうなほどの涙が湧いてきましたが、
大げさな深呼吸で 何とかこらえる事ができました。
突然現れた紫色の傷は まるで、
時間切れを告げる刻印のように見えました。

この紫は 私の皮を 肉を
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