泣き虫フーガ/村田 活彦
その朝、町のひとたちは
台風のような雷のような泣き声で目がさめた。
山にかこまれたちいさな港町、
その外れにある病院の一室で
フーガが産声をあげたのだった。
フーガは泣き虫だった。
どんな赤ん坊より大きな声で泣いた。
その声は小さな部屋の窓をふるわせ、
小さな庭の竜舌蘭をふるわせ、
小さな町の屋根とアンテナと
パルプ工場のけむりをふるわせ、
小さな港に停泊する船のマストをふるわせた。
ガラガラをふっても、
いないないばあをしても、
ゆりかごを揺らしても
フーガは泣いてばかりいた。
「泣くのは元気な証拠」と母親はよろこんだが、
明らかに泣き過ぎだった。
父
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