煙草を1本下さい/中山 マキ
 














陥没した心の中でくだを巻く
ある程度成長をすると
人は途端に行き詰るのか
岐路という岐路を乗り越えて
果てていくならば
出来る限り穏やかでいたいのに
波風を立てているのは主に自分で
何の落ち度もない他人ばかりを
恨んでは立ち直る

わたしはいつからこんなに
愚かで下劣な人間になったのだろう
反省の弁ばかりが達者になって
目を伏せて頭を下げていても
何処かで赤い舌を出し
自分が可愛くて仕方がないのかもしれない

灰で埋め尽くしてしまいたいほど
眩しい世の中は
眺めれば眺めるほど残酷で
生まれ変わることも
そう簡単ではないことを思い知らされる
だからそこのお嬢さん
煙草を1本下さいな
紫煙をくゆらせて
斜めに見た世間に
嗚呼、笑われるのもそう悪くはない







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