複眼/Lucy
 
色褪せてしまうまで
崩れ落ちるまで
見届けたかった
遠くなる影を見送り
不在を確かめたなら
踵を返し
歩きだすはずだったのに
あとからついていったのだ
見失う一歩手前の距離を保ち
二度と会わない覚悟なんかできなくて
走りだしたり
呼び掛ける度胸も無くて
見つめる程増えていく
そのどれ一つとして信じないまま
幾つもの
虚像を結んで



戻る   Point(16)