水の儀/千波 一也
鏡のなかに
とおく落ちていった
ひとつ
ひとつの
香りのあわれさは
なりゆきを待っている
いくつもの
抜け道にあざむかれてしまう
わずかなすき間にひそむ
その
夜の筋書きを
こころ待ちにしている
刹那も永遠もたがわない
うりふたつ、に映るのは
そこにもがく影ばかり
刹那も永遠もたがわない
きれいな光が望みなら
零落を
うのみに零落を
禁じることが確かな手立て
色をなくした音たちの
故郷は
いずこ、と
聞き耳をたてて
まあるい器が散ったなら
それは
いくたびも
輪をなしてゆく
だれにも
咎めることのかなわない
うつくしい響きが
鏡の
むこうに
許されながら
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