北の亡者/Again 2014睦月/たま
絵ハガキ
古びたペアリフトが、白く耀く斜面と雲ひとつな
い青空の隙間を、カタコトと、揺れながら私を山
頂へと運んでゆく。飽き飽きとした水平線上の生
活を忘れ、雪の斜面を滑り落ちることだけが目的
の、単純な行動を繰り返す。
眠くなるほど長いリフトを降りて、少し右に下る
と、小さな丘のような丸い山頂が見えた。スキー
の板をはずして氷のような雪面をよじ登る。頂に
は木札のぶらさがった丸木が一本、ポツリと立っ
ていた。
南に向って立つと、目の前に八ヶ岳の険しい稜線
と、広い裾野が「へ」の字に見える。その裾野に
重なるようにして北岳を宿す南アルプス。すぐ横
に駒ヶ岳の中
[次のページ]
戻る 編 削 Point(24)