祖母の記憶/壮佑
 

十六で嫁入りした祖母は
まだ娘だったから
近所の子供達と鞠を突いて遊んでいた
すると 嫁入りした女はもう
そんな遊びをしてはいけないと
誰かの叱る声が聴こえて来たという


春の夜明け前に
積み重なった笹の葉の下から
筍が微かな音を立てて生えて来る
祖母が竹薮に行くと
子供の姿をした竹薮の精が
飛ぶように先を走って行き
祖母は少ししんどそうに笑いながら
その後を追って筍を掘る


雉が飛び立つ夏の畑で
祖母と離れて遊んでいた私は
からす蛇に遭遇して泣き出した
祖母は作業の手を休め
額の汗を手甲で拭いながら
雉と一緒にからす蛇も飛んで行ったと
泣き
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