花を育てるひとへ/村田 活彦
しゃがみこみ 君は土に触れる
口にできなかった思いが
冷えて固まっている
ほこりを舞いあげながら
潮まじりの風が頬をたたく
道であったはずの地面が続いている
枯れたつる草をはぎとり
瓦の破片をどかし
きみは土を掘る
スコップで それからその手で
砂と砂利とねば土の奥へ
貝殻や割れたガラスや針金のハンガーや
醤油のペットボトルをかき分けながら
ゆっくりと耕す
爪の間に入り込むざらざらした感触
そのなかで微生物たちがざわめいている
足元ではミミズもオケラも祭りを続けている
泥と油のしたで根っこが伸びる
君は種を植え、水をまく
それしかできな
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