8:00/イグチユウイチ
追いかけても、
追いかけても、
遠くなっていった。
もつれた舌で、
上ずる声で、
叫んでもみた。
微粒子の浮かぶ朝に、
排気のスモークに消えた言葉。
気付くのが遅かった。
そう、遅かった。
立ち尽くして、
未遂の重みを噛み締めるのにも慣れてきたようで、
こんなものを抱えてまた引き返すこの背は
もはや丸くなってはいないが、
それでも沁みるようなこの痛みの先に
駈けて叫ぶあの僕がいるのだろうか。
やがて巡ってくるその朝に、
果たして僕は繋がっているか。
駈けずとも叫ばずとも、
このゴミ袋を回収してもらえるだろうか。
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