太一の決断/MOJO
 
知った。駅の南側にある、行き着けのバーで、電車が動きだすまでの間、過ごすことにした。
 カウンターだけの小さな店に、客は太一ひとりだった。女性ボーカルのジャズスタンダードが流れ、ママのアキは、アイスピックで氷を砕いていた。
「アキちゃん、今日もあれ、でるかな」
「あれ、とか、でる、っていうのは失礼よ」
「そうか、じゃぁ、彼女」
「どうかしらね。ロックでいいの? それとも水割りにする?」
「氷を大盛りでロック」
 カウンターに太一が頼んだグラスが置かれる。太一は、壁に立てかけてあるギターを膝に乗せ、つま弾きながら、氷の角に丸みがついてゆく様を観察するかのように見つめた。スコッチと少しづ
[次のページ]
戻る   Point(3)