太一の決断/MOJO
 
 暦の上では、冬至が過ぎたが、このところ、小春日和が続いていた。それが、一昨日あたりから天候が崩れ、今朝は霙交じりの雨だった。昼過ぎに雪に変わり、太一がパソコンの電源を落とす頃には、綿を千切ったような雪片が夜空に舞っていた。十二月にこんな大雪は、東京では珍しい。
 会社から駅までの道を、太一は革靴の足裏に神経を集中させながら歩いた。
 東京は大雪になると、脆弱な街になった。人々は危うい足どりで歩道を歩き、軒下で傘に積もった雪を払い落とした。車道を行き交うクルマも殆どがタイヤにチェーンを巻き、煩い音をたてながら、灰色のシャーベットを撒き散らした。
 駅に着き、太一は電車が止まっていることを知っ
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