太一の決断/MOJO
はないから」
雪は小降りになり、電車も運転を再開した。太一は勘定を払い、バーを出た。駅まで歩く間、ジルが言ったことを考えた。酔いも手伝ってか、妖精になるのも悪くないような気がしてきた。
しかし、それ以来、ジルが太一の前に姿を見せることはなかった。あのバーに通い、氷が溶けて、グラスが鳴っても、ジルは一向に姿を現わさない。
「きっと、太一の代わりを見つけたのよ」
アキがぽつりと言う。
太一は少し後悔したが、この屈託の多い人生を続けてゆくことに決めた。
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