眠魚より/カマキリ
いつか煙突みたいだと言われたような
紫煙に囲まれた部屋で
背中にくっついたソファの表面を剥がしながら起きる
いらいらしたりそわそわしたり
なぜこのようないったりきたりを繰り返さねばならぬのか
そこに生きてるってことがあるんだぜ、と漸く納得させて
灰皿の中から適当な一本を見つける作業
水槽から聞こえるモーター音に心臓の鼓動をゆっくり重ねて
吐き出した煙にすべてが隠れてしまわないように
注意深くもやもやを出していく
一瞬、
これもまた胸の内を明かす、というのにはならないのかと
埃っぽい周囲に賛同を得ようとしたが
かえってくるのは慢性化した気怠さだけだったので
二口目を下の上に転がした
今日が晴天ではないことが、少し救いだった
どんよりとした気持ちはどんよりとした天気に誘われて
ベランダで戯れている
背伸びして天に伸ばした両手は
引力に負けて
風は夕飯時のにおいを運んできて
でもまだ僕は煙突みたいに煙を出している
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