シジミ蝶/壮佑
 

道路の両側に続いていた
古い街並みの片側を抜けると
港の棕櫚の木が見えてきた
十字路に差し掛かり
赤信号で停止する
風が止んだ
向こうに海が見える
ふいにシジミ蝶が飛び立った
フロントガラスに斜めにぶつかって
表面に曲線を三つ四つ描いた後
身を翻して海の方へ消えた
港からは船が出て行く
郷里の島に寄港する船だ
何年も帰っていない
もうすぐ四月
母の七回忌がやって来る





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