麦酒の味 /服部 剛
週末の仕事を終えて
駆けつけた、朗読会の夜。
再会の朋と麦酒の入ったグラスを重ね
泡まじりの一口目に「ふうぅ…」と、一息。
不惑の四〇歳とやらになって間もない朋は
司会者に呼ばれ、立ちあがり
店内の舞台へ、ゆっくり歩く――
「オッケー…!!火星人、ちゅーもーーく!」
決まり文句は
集う皆の日々のしょっぱい涙さえ吹っ飛ばし
おのおのの無数の笑いの細胞は瞬時に、開く
手のひらで、悲劇を喜劇に転がして
黒縁眼鏡の奥でニヤリと笑ってみせる
詩人の言葉を酒の肴に
眼下のグラスでもこもこ歌い出している
泡と麦酒を、もう一呑み…
頬は火照り
心はほわっと軽くなり
日々の重力よりも、少し優しくなれた気がした
詩人達の集う不思議な夜
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