新しい感情/カワグチタケシ
 
歩きつづけていればいつも風のなかにいられるのに
立ち止まればいつも後悔ばかりあふれ出す
そんな思いを振りはらいながら地下鉄の駅まで
強い日差しに照らされて歩く

明け方に見た夢のなかで傷つけたのは
もう何年も会っていない古い友だち
殺してしまったいくつもの想い
不用意な言葉で、しぐさで、目つきで

夜中降った雨が上がり、とても静かな朝
胸の底に新しい感情が生まれる

翌朝、集合住宅の扉から男がひとりずつ出てくる
ふらつきながら、あるいは、ちから強く
それぞれの足どりで地下鉄の駅に向かう
そのひとりが君だ

反対側の窓からつけっぱなしのテレビの声が
外国の暴動を
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