「老人と犬」/宇野康平
、公園
であった空き地を眺める主人はいつもより、小さくみえた。白毛に隠れ
た上目遣いで、心配をして喉を鳴らすと主人は笑って頭を撫でてくれた。
「ほら、ごらん」
解体されて更地となった空き地から朝日が暖かなあいさつする。白くれ
は、ただ何も考えず、眩しくて、暖かくて、優しいものを眺めている。
その瞬間、白くれの鏡のような瞳は空と朝日を映していた。それは丁寧
に磨かれた水晶のように、自然の美しさを映し、あまりに綺麗で、それ
を見るのが老人のたった一つの楽しみであった。
《劣の足掻きより:http://mi-ni-ma-lism.seesaa.net/》
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