呼び声ー高村光太郎展にてー /
服部 剛
横たわる死者の耳は、空いている。
薄ら目を、開いている。
顎を天に上げつつ
何か、ものを云おうとしている。
力強い耳朶から
渦巻いてゆく鼓膜へ
吸いこまれそうに視る、僕は
鼓膜の奥に廣がる死者の宇宙へ届くよう
精一杯に吹きこむ祈りの声音(こわね)を、響かせる――
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