裸婦像の声ー高村光太郎展にてー /
服部 剛
鏡の向こうの世界から
足音も無く
こちらに歩いてくる女(ひと)は
軽やかにも手をあげて
(今日(こんにち)は…)と、旅人の僕に云う
裸婦の姿のその女に
思わず僕も手をあげて
ふれることない手と手の間に
互いの(今日は…)は、木霊(こだま)する
智恵子像の両目の
黒い小さな暗がりは
黙ったままに微笑を秘めて
(生の歓び――)を
無言で僕に、囁いた
戻る
編
削
Point
(4)