冬情/月乃助
{引用=
冬がとどく
真夜中のようにしずかに
誰にも 気づかれることの
ないように
技師のつめたい指をして
冬は、いつもきびしさで やってくる
翳ろう冬空は 鈍色(にびいろ)
ねずみが ねずみ色
空色を失った 空
力あるものは、いつもさらなる権力を欲するように
枯葉の従者たちが舞うなか 冬の
北風の叫び声をあげる
秋をさがせば、
過ぎ去ったのと、何もないのとは同じこと
ファウストのじいさんの言葉がよみがえり、
幻覚がみたくて
時計の針をはずし
魂をあずけた {ルビ
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