散策/月形半分子
 
もう、手の届かない
懐かしい季節に
向かうようにーー

クレソンをひとくち
レモンもバニラもお好みで
そんなふうに朝を過ごしたら
天気は良好
青りんごをポケットに入れて
森へ出掛けよう

柔らかな緑の萌えるなか
爽やかな風のそよぎにふかれ
涼やかな葉ずれの音を聞きに
小川が陽光を乱反射させて
さんざしまでがひどく眩しい
若い森へと

あぁ、森に苔やハッカの匂いが溜まっている
陽が高くなるほど閉ざされて、強さをますこの匂いのなかで
僕は思い出を撫でる
時を悔やむ一歩手前を夢想するように

木漏れ日がレースのようにふりそそいで
僕を野苺のように照らしている
もし、このまま沈黙していたら
僕は墓標のよう見えるに違いない

思い上がったハッカの影に立つ
淋しい墓標に




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