曲がり角のひと/たま
ひとはまっすぐ生きられない
かならず、曲がり角はやってくる
見覚えのない交差点はこわい
視界の閉ざされた曲がり角は、もっとこわい
たとえば
人生がなくても小説は書けるという
それは狂気なのだと思う
留まることなく
崩壊するための
そのひとはいつも曲がり角に立っている
ほんのすこし、俯いて
ひとつしかないおおきな瞳には
見えないはずの曲がり角の向こうが
写っているはず
この角を曲がれば、崩壊するかもしれない
ささやかな日々の暮らしも
だからといって
留まることはできないと知っているのなら
なにも期待しないで
狂気を受け入れるしかない
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