真夜中の耳/そらの珊瑚
君の胸の音を聴いている
瞳を閉じれば浮かんでくる
電車がゆく
車輪の音は確かなリズムを刻む
無機質でいて
それはなぜか温かい
からだじゅうに
張り巡らされた
赤い線路を
休むことなく
こんな真夜中にも電車はゆく
君の始発駅を心臓と呼ぶ
ぐるぐるまわって
やがていつか終着駅となる
君の胸の歌を聴いている
名前さえまだなかった頃の
朝も夜も知らなくて
うすやみの湖の中で
母さんが
繰り返し
うたってくれた
とても懐かしい歌を
自分の歌は聴けないから
君の歌を聴いている
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