詩に関する雑文、あるいは恋文/bookofheaven
 
だったのかで想像が広がる。
 単純な詩の言葉に、その光景を想像するのは楽しい。でも詩はそれだけじゃない。

 父が癌で入院した頃、私は仕事帰りの自転車に乗って病院まで行ったが、父は眠っていて、疲れたような顔は父の本来の色白の肌をさらしていた。
帰り道は吹雪になっていて、力の抜けた私は歩いて夜の歩道を家へ帰った。風はさほどでもなかったが、雪は徐々に力を抜いて降っていて、見上げるとなるほど向こうの空が晴れかけている。雲間にちらりと月が見えた。
その時、私は唐突にさっきの「涙」の詩を思い出した。
そうして作者も実は悲しかったのかも知れない、誰かを見舞った帰りにどうしようもなくて涙を流して、で
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