「蹲る女」/宇野康平
重機で見事にさら地となった公園で、工業油臭い軍手、いくつ
か拾って胃に石を詰めた。冷たい朝は、練りこんだ軟膏もひど
く騒ぐだけで、隣人は笑う。
幼児は、水溜りに浮かぶ歪んだ己の顔を見て泣く。
バシャバシャと水を蹴ろうが、バシャバシャを水を蹴ろうが。
夕方、地蔵の掃除で、油抜きした軍手をさっそく使いまして、
一足の革靴はすぐに汚れまして、あっちの草むらで野良の猫
は逐次、交尾をはじめまして。
それなのに、隣人は笑う。
《劣の足掻きより:http://mi-ni-ma-lism.seesaa.net/》
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