棄て(られ)た夜に/大覚アキラ
遠いところまで行って
棄ててきたなにかを
遠くから思う
耳鳴りのように
くりかえし
くりかえし
人は
信じうるものを
信じるのではなく
信じたいと願うものを
信じるのだろう
神様とか
運命とか
愛とか
そんなものよりも
いま
指先に触れている
この湿度と温度を
わたしは信じる
いや
信じたい
信じたいと
願う
それはたぶん
祈りだ
遠いところまで行って
棄ててこなければ
その意味が
わからないこともある
そして
わかったときには
祈りはもう
届かない
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