ましろいかお/服部 剛
気がつくと
見知らぬ部屋に、彼は立っていた
窓から吹き込む夜風に
カーテンはふくらんでいた
鏡に顔を映すと彼は
ふと 自分を
のっぺらぼうにしたい衝動に駆られた
ポケットから取り出した消しゴムでこすり
自分の顔を白くした後
きらりと光る美男子を描いてみたが
3枚目体質の体の
あちらこちらがむず痒(かゆ)くなってきたので
慌てて消しゴムでこすり、今度は
魅惑の美女を描いてみたが
彼のうすい胸板がふくらんできたり
手足の指にマニキュアを塗ったり
唇に紅をひくのも
たまには悪くはないが
出産となると
きっと泡を吹いて気を失うであろうし
「美男
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