灰の雨/まーつん
見たくもないものが
見えてしまう時
人は、目を閉ざす
そうして
彼等は裸となり
波打ち際に寝転がり
片耳を、砂に押し付けて
波の轟きに
聞き入っている
剥き出しの身体は
白く、冷え切る
石となった
明けの空に、星は霞み
夜の帳を賑わせた
宴の響きも遠ざかり
灰色の空の下
何かが茎を伸ばし
色のない花弁を広げ
空しく咲き誇った
去りゆく命の数々が
砂に刻んだ足跡は
波打ち際を、点々と
染みのように飾っていく
見えなくなるまで、遠くまで
身を寄せ合う魚達は
一つの影に溶け
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